自閉症の知的障害のために7歳の知能しか持たないサムは、スターバックスで働きながら一人で愛娘ルーシーを育てていた。ビートルズのことなら何でも知ってる、好きな映画の台詞ならスラスラと暗唱できる、そして周囲の人を色で識別する共感覚の才能を持っている。母親はルーシーを生むとすぐに姿を消してしまったが、2人は施設の仲間、イフティや切手が趣味のブラッド・折り紙が得意なジョー・ちょっと陰謀妄想の入ってるロバートたちの協力、隣人の元ピアニストで外出恐怖症のアニーにも助けられながら、幸せに暮らしていた。しかし、ルーシーが7歳になる頃、その知能は父親を超えようとしていた。娘は自分が父よりも成長してしまうことに苦悩していく。そんなある日、サムは家庭訪問に来たソーシャルワーカーによって養育能力なしと判断され、ルーシーを施設に入れ、里親に預けるべきだと判断され、奪われてしまう。ルーシーを取り戻したいサムは、敏腕で知られる女性弁護士リタのもとを訪ね、裁判で戦うことを決意する。
 『アイ・アム・サム』は、2001年に公開されたアメリカ映画。知的障害を持つ父親と、幼い娘との純粋な愛をビートルズの曲とともに描いた感動作。日本での公開は2002年6月8日。父親役のショーン・ペンがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。娘役のダコタ・ファニングは放送映画批評家協会賞、ゴールデン・サテライト賞、ラスベガス映画批評家協会賞、ヤング・アーティスト賞を受賞し、映画俳優組合賞の助演女優賞にも最年少でノミネートされた。日本アカデミー賞の外国作品賞にモノミネートされた。
 涙なしでは見れない素晴らしい作品が誕生。かけがえのない娘・ルーシーを純粋に愛し優しく見守る知的障害者・サムをショーン・ペンが熱演。サムのひたむきな姿に、仕事人間だったエリート弁護士リタも大切なものが何か気付かされるが、そのリタを演じるのはミシェル・ファイファー。父親の障害を理解し、全面的に受け入れ父親を愛するルーシーにダコタ・ファニング。もう名子役の代表のようになっている。
 親子の絆を描いた作品は数多くあるが、親子の無償の愛の素晴らしさをこんなに爽やかにピュアに描いている映画は他にないかも。なんと言っても『レインマン』のダスティン・ホフマンにも負けずとも劣らないショーン・ペンの演技は必見。脇を固めるダイアン・ウィーストやローラ・ダーンの存在もいい味を出している。『コリーナ、コリーナ』で監督デビューし、『グッドナイト・ムーン』や『ストーリー・オブ・ラブ』で共同脚本を手掛けてきたジェシー・ネルソンが、製作・脚本も務めての監督第2作。
 このころのショーン・ペンは演技者として乗りに乗っていて、敢えて難役に挑戦することが多かった。でも、観ていて安心で映画の品質は保証されたようなもの。そして全編を彩るビートルズのナンバーが作品をよりドラマティックに見せている。歌曲はシェリル・クロウ、ベン・フォールズら豪華アーチストがカバーしていたりする。サムの語るビートルズ・メンバーの逸話の数々。もうすでに何本もの映画で演技力を証明済みの小役ダコタ・ファニング。彼女の愛らしさ、頭の良さ、演技力がこの作品の魅力を増してる。敏腕弁護士リタを演じるミシェル・ファイファーとルーシーの里親役ローラ・ダーンの演技は多少過剰気味だが、そこはメリハリで気にならない。作品はそのテーマの大きさに押し潰れることなく、素晴らしい作品に仕上がっている。
 冒頭、ルーシーのはサムのことを気遣って、読める字を読めない振りをするシーンからはじまる。泣かされる準備をさせられる。そのあと畳み掛けるようにルーシーの靴を買うためにサムとサムの仲間たちがお金を出し合うシーン。映画として言いたいことは、「障害者の親の資格と、娘の幸せ、親子の絆」か。ただ知的障害者が主人公であることは、設定にすぎず、子を育てるために障害のある人に限定された事ではない。子を持つどの親にも言えること。結局、この作品で親の資格で何よりも大事なのは、子を想う愛の大きさということで結論付けている。公では子供を育つために必要なことは、子を養うだけの経済力であり、子を正しい道に導いていくだけの知能。確かに必要なものだ。だが絶対でない。この映画を観ていると、愛によって築かれた親子の絆こそが絶対だと思わせてくれる。そしてまた、現代社会に失われた大切な想いを持ち得る男によって周囲の者たちが影響され、癒されていくという、さわやかで後味のよい映画に仕上がっているのがいい。エンディング、里親のランディがルーシーをいちばん愛しているのは、父サムであることに気づき、サムの元に連れ戻しやとき「私は裁判で証言しようと思ってたの、誰よりも彼女を深く愛せると、でも言えないわウソになるもの」と言ったランディにサムが「ルーシーの絵の赤い色は、きっと君のことだよ」と言ったシーンは秀逸。

◎作品データ◎
『アイ・アム・サム』
原題:I Am Sam
2001年アメリカ合作映画/上映時間:2間13分./松竹・アスミックエース配給
監督:ジュシー・ネルソン/脚本:クリスティン・ジョンソン, ジェシー・ネルソン/製作総指揮:マイケル・デ・ルカ, クレア・ラドニック・ポルスタイン, デヴィッド・ルービン/製作:マーシャル・ハースコヴィッツ, エドワード・ズウィック/音楽:ジョン・パウエル/撮影:エリオット・デイヴィス
出演:ショーン・ペン, ミシェル・ファイファー, ダイアン・ウィースト, ダコタ・ファニング, ローラ・ダーン

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