メルボルンに生まれたデイヴィッドは幼少の頃から厳格な音楽狂の父ピーターにピアノを仕込まれ、ピアニストになるべく英才教育を受け、天才少年として評判になった。だがアメリカへの留学の話、そして英国の王立音楽院に留学の話が持ち上がると、父は突然彼が家族から離れることを暴力的に拒否する。デイヴィッドはついに家を出る。ロンドンで彼はセシル・パーカーに師事し、パーカーは彼をわが子のようにデイビッドを愛し、ピアノ教育に全力を注いだ。彼はコンクールでの演奏曲に、幼年時代から父にいつか弾きこなすよう言われていたラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を選ぶ。誰もが無理だと言った難局を、猛特訓で完璧に演奏したデイヴィッドだった。しかし直後、あまりのストレスに彼は発狂した。そして精神に異常をきたし始め、それから10数年を精神病院で過ごした。デイヴィッドはかつて自分のファンだったという女性に引き取られ、その後も引取り先を転々とするが、ある晩、激しい雨の晩、デイヴィッドはびしょ濡れでワイン・バーのドアを叩いた。そこで働くシルヴィアはデイヴィッドを家まで送ってやった。シルヴィアはデイヴィッドがピアノを弾くことを知り、彼はやがて店の専属ピアニストとして大人気になる。新聞にも記事が出て、父も訪ねてくるが、デイヴィッドは父を許せなかった。シルヴィアは星占い師のギリアンを紹介し、二人はやがて愛し合い、結婚した。そしてデイヴィッドはついにコンサート・ピアニストとして復帰する。だがその席に、父の姿はなかった。彼は妻とともに父の墓に参るのだった。
 ピアノの天才少年と呼ばれ、一度は精神を病みながら、ハンディキャップを越えて復帰した実在のピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴッドの半生を基に描く感動の音楽ドラマ。監督はテレビ出身のスコット・ヒックス。ヘルフゴッド夫妻に取材したヒックスの原案を基に、ジャン・サルディが脚本を執筆。ピアノ演奏はヘルフゴット自身によるものだ。出演は成人したデイヴィッド・ヘルフゴット役を舞台での長年のキャリアを持つジェフリー・ラッシュ、10代をのノア・テイラー、幼年期をアレックス・ラファロヴィッツが演じる。父親役のアーミン・ミューラー・スタールの存在感は強い。ジョン・ギールグッド、リン・レッドグレイヴなどが脇を固める。1997年のキネマ旬報外国映画ベスト・テン第3位のほか、本作品は各部門でオスカーにノミネートされ、ジェフリー・ラッシュは主演男優賞を獲得している。
 ユダヤ人家族、厳格な父、神童と呼ばれた才能、そこにスポットライトが当たると思った途端、さらに苦悩に満ちた日々が訪れることになる。幸いボクには天才的才能が何もないから、天性の才能の持ち主の苦悩はわからない。しかし、コンテストでのデイヴィッドの演奏は圧巻であり、手に汗を握る。このシーンは音楽がわからなくても魂で伝わってくるのだ。ここが、この映画の真骨頂と言える。ここでいつか壊れそうなプレッシャーとパワーが幼い彼を支配するのがわかる。人間模様の軋轢はわかるがその原因や経緯がはっきりしない、ある意味中途半端映画かも解らない。ただ、おそらく父親にはユダヤ人収納所での生活が家族の団結を崩せない強い思いに駆られてしまっていたのではないかと勝手な解釈をしてみた。正直、ジェフリー・ラッシュよりノア・テーラーの方が印象に残った。そこには単にピアノを弾きたいという欲求だけでなく、魂の注入があるのだ。
 苗字の“ヘルフゴッド”を本人は“ヘルプゴッド”という。神様が助けてくれるというのだ。なんとも意味合いの深い苗字だ。苦しみはどうでもいい。それで精神に異常をきたそうがどうでもいい。ここで、彼は最初追しつけられていたピアニストの夢を押し付けた父親と違う形で自分の夢にし、そして最終的に彼なりの夢を叶え、幸せを得る。ここに意味があるのだ。
 これこそ、旋律が人生を語っているというものだ。この経緯、精神壊れても、これが彼の人生、ピアノと愛する人との獲得、これこそが人生だ。そう思う。ボクは今のボクのパワー、精神状態なりの幸せと夢が待っているかもしれないと思わせてくれる感動的な映画だった。

◎作品データ◎
『シャイン』
原題:Shine
1995年オーストラリア映画/上映時間:1時間45分/KUZUIエンタープライズ配給
監督:スコット・ヒックス/原案:スコット・ヒックス/脚本:ジャン・サルディ/製作:ジェーン・スコット/音楽:デヴィッド・ハオフシェルダー/撮影:ジェフリー・シンプソン
出演:ジェフリー・ラッシュ, ノア・テイラー, アレックス・ラファロウィッツ, アーミン・ミュラー・スタール, リン・レドグレイブ

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