アイルランドの首都ダブリンの労働者階級に生まれたら成功する道は少ない。プロサッカー選手か、プロボクサーか、ミュージシャンか。そんなダブリンで、本物のソウル・バンドを結成するべく集まったジミーとデレク、アウトスパン。彼らは新聞広告でメンバー募集をかけたが、次々とやってくる候補者はどれも変なのばかり。 結婚式で泥酔して歌っているところをスカウトされたデコ、聖歌隊出身の3人のコーラスガール、世界中の有名アーティストと共演してきたとはったりをかますジョーイ・ザ・リップス、デコとケンカして脱退したビリーの後に入った用心棒として雇ったはずのミッカー、寄せ集めながらも12人のバンド「ザ・コミットメンツ」の活動がスタートした。素人同然の彼らが結成したバンド“ザ・コミットメンツ”は練習場所にもこと欠く困難や挫折を乗り越えて、次第に魂の音楽を作り上げてゆく。しかし、女たらしのジョーイはコーラスの女の子たちに次々と手を出し、デコは益々増長して、音楽の方向性が違ってきたメンバーも出てきた。 めきめきと実力をつけレコード会社から契約の話が来るところまでこぎつけながらも、メンバーの心は次第にばらばらになっていった。
 ロディ・ドイルの小説『おれたち、ザ・コミットメンツ』の映画化作品。ダブリンを舞台に、ソウル・バンドに賭ける若者たちを描く。『スナッパー』『The Van』と続くロディ・ドイル原作の"バリータウン3部作"のひとつ。この原作を基に、アイルランドの首都、ダブリンを舞台に、素人のソウル・バンド“ザ・コミットメンツ”に集まった若者たちの青春像を描いた音楽ドラマ。
 『フェーム』『ピンク・フロイド/ザ・ウォール』『バーディ』『ミシシッピ・バーニング』など斬新な感覚の作品を世に送り続けているアラン・パーカー監督の90年代の代表作。その後も『エビータ』などジャンルにとらわれない秀作を撮り続けている彼だが、この『ザ・コミットメンツ』は優れた音楽映画であると同時にアイルランドの素晴らしい青春群像ドラマでもある。出演者は全員オーディションで選んだアイルランド出身のミュージシャンというだけあって、ライブシーンは本物の迫力。夢に向かってひた走る若者たちに熱い共感を覚えずにはいられない。イギリスのアカデミー賞で監督賞、作品賞、脚色賞、編集賞4部門受賞、東京国際映画祭で監督賞受賞のほかオスカーでは編集賞にノミネートされた。
 中で「アイリッシュはヨーロッパの黒人だ」「ソウル・ミュージックをやるには、俺たちシロすぎないか?」との問いにジミーはこう答えるシーンがある。「アイルランド人はヨーロッパの黒人だ。 ダブリンっ子はアイルランドの黒人だ。ダブリン北部に住んでる奴はダブリンの黒人だ」―あまり、ヨーロッパの差別には詳しくないのだけれど、ヨーロッパ、とりわけイギリス人差別と偏見を受けているアイルランド人。 その中でも特に貧しいダブリン北部に住んでいる人々は低所得層向けの公営住宅に住み、建物から建物へとヒモが渡され、そこに洗濯ものが所狭しと干されている。そんな場所に住む彼らは、黒人の中の黒人、ソウル・ミュージックを演奏するにふさわしい連中という意味だ。ダブリンの中心を流れるリフィー川と男たちを言い表した「ザ・リフィー・ラッズ」、そして「ザ・ノースサイダーズ」と、北部住民であることにこだわっている彼らは、バンドのメンバーを集めるにあたっても「サウスサイダーズはお断りだと、バンド名も「ザ・コミットメンツ」というバンド名を決めた。「委託」という意味のこの単語には刑務所への「収容」という意味のスラングもある。
 また、これは音楽と青春だけの映画のようにも見受けられるが、差別問題のほかに宗教の問題も隠れている。トランペッターのジョーイは、有名アーティストたちと共演したことがあると、真実とも嘘ともとれることを言う。アイルランドにはソウルが必要だと神に言われた、ソウルがあれば国民同士で殺しあわずにすむと、 カトリック系住民とプロテスタント系住民が長年にわたって殺しあってきた北アイルランド紛争のことを言ってたりもする。
 当時、音楽を目指していたボクはこの映画を見て虜になった。今は趣味となり諦めてからなんとなく、映画の評価を冷静に判断できてなかった気がする。公開当時の方が感動した。しかし、やはりボクは音楽映画に評価が甘い。

◎作品データ◎
『ザ・コミットメンツ』
原題:The Commitments
1991年イギリス・アイルランド合作映画/上映時間:1時間58分/20世紀フォックス映画配給
監督:アラン・パーカー/原作:ロッディ・ドイル/脚本:ディック・クレメント, イアン・ラ・フレネ, ロディ・ドイル/製作総指揮:アーミアン・バーン・スタイン, トム・ローゼンバーグ, ソーター・ハリス/製作:ロジャー・ランドール・カトラー, リンダ・マイルズ/音楽:ウィルソン・ビケット/撮影:ゲイル・タッターサル
出演:ロバート・アーキンズ, マイケル・アーニー, アンジェリン・ボール, マリア・ドイル, デイブ・フィネガン

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