ある日突然、薬物とアルコールの大量服用で精神病院に収容されたスザンナ。病名は境界性人格障害。彼女に人格障害という自覚はなく、病院の環境に馴染めなかったスザンナだが、他の患者たちを牛耳っていたリサの精神疾患を誇るかのような態度に魅かれていくうち、そこが自分の居場所と感じるようになっていく。そしてリサの脱走に同行することになってしまう。途中、頼って訪ねた退院した患者仲間の近親相姦を罵倒して、自殺に追いやってしまうリサに、徐々に疑問を持つようになっていった。そのせいでリサに疎ましく思われて、他の患者を味方につけたリサの破壊的な行動に、スザンナは孤立してしまう。やがてスザンナは、リサはこの精神病院でしか生きられないから強気になれると気づき、自分は社会復帰を目指そうと決意する。
 監督は『コップランド』『君に逢いたくて』などのジェームズ・マンゴールド。正直、この映画が彼の最高傑作だと思う。主演を演じるのは、自らも境界性人格障害で精神科入院歴のあるウィノナ・ライダー。原作にすっかり惚れ込んだ彼女は、製作総指揮も買って出た。彼女が入院したのは20歳のとき。発作的不安に襲われて入院を経験した彼女は、混乱や自暴自棄は誰にでも起こり得るし、人を狂気に追い込みかねないということを知っていた。主人公に深い理解と同調を感じて体現して見せた。本作でアカデミー賞やゴールデングローブ賞の助演女優賞を始め数多く賞を獲得したアンジェリーナ・ジョリーの演技にはぶっ飛んだ。ほかの患者たちを演じるブリタニー・マーフィやクレア・デュヴァル、エリザベス・モスなどの若手演技派女優の病んだ心を表現する演技もも見どころ。また、厳格でもあり優しい看護婦に扮したウーピー・ゴールドバーグや知的な主任精神科医に扮したバネッサ・レッドグレーブも印象的な存在感を見せている。
 原作は1994年に出版されたスザンナ・ケイセンによる自伝。小説の邦訳は吉田利子によって「思春期病棟の少女たち」というタイトルで出版された。スザンナ・ケイセンは、精神病院で2年間を過ごし、苦しかった人生の一時期をあたかもスケッチをするかのように綴り、退院から25年後に出版した。この戦慄の実話はベストセラーになった。心を病んだ少女たちの気持ちを饒舌に語り、若い女性たちの熱狂的な支持を得た。「カッコーの巣の上で」などに匹敵する狂気を描いた、しかし実話ということもあって批評家からも絶賛された。内容は単なる苦悩や希望などにとどまらず、拘束と自由、友情と裏切り、そして狂気と正気の境界について問いかける。タイトルは直訳すると「中断された少女」。映画の邦題に使われた「17歳」という年齢は、2000年に17歳による少年犯罪が多発し、マスコミが「キレる17歳」という言葉を多用した影響だ。原題にも物語にも17歳という年齢は出てこない。 ただし、原作者のスザンナ・ケイセンがアスピリンを大量に飲んで自殺を図り、精神科に入院したのは17歳だったことは事実ではある。
 夢と現実が混乱したことはあるか、お金があるのに万引きしたり、落ち込んだり。自分が異常だったのか、時代のせいなのか、ただ躓いただけなのか、ただ、とても寂しかっただけだ。そんな感じだ。彼女は頭痛を止めたかっただけで、自殺をしたつもりはないと表現している。そこで診断された病名「ボーダーライン・ディスオーダー」、境界性人格障害だ。自己のイメージや長期的な目標、どんな友人や恋人を持つべきか、どんな価値観をとるべきかに自信が持てない症状をいう。切れてしまいそうな神経を抱え、それでもこの病院で出会った風変わりな女性たちが、親友になるだけでなく、見失っていた自分自身を取り戻す道を明るく照らし出してくれたわけである。実は当時、この映画を観た時に受けた衝撃と、今、鬱病を経験した自分が観る衝撃は全然違った。今回の方がはるかに苦しく愕然とした。多分、年をとったせいではない。心が弱くなったせいだ。

◎作品データ◎
『17歳のカルテ』
原題:Girl, Interrupted
1999年アメリカ・ドイツ合作映画/上映時間:2時間7分/ソニーピクチャーズ・エンターテインメント配給
監督:ジェームズ・マンゴールド/製作総指揮:キャロル・ボディ, ウィノナ・ライダー/製作:ダグラス・ウィック, キャシー・コンラッド/原作:スザンナ・ケイスン/脚本:ジェームズ・マンゴールド, リサ・ルーマー, アナ・ハミルトン・フェラン/音楽:マイケル・ダナ/撮影:ジャック・グリーン
出演:ウィノナ・ライダー, アンジェリーナ・ジョリー, ジャレッド・レト, ウーピー・ゴールドバーグ, ヴァネッサ・レッドグレイブ

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