1973年、15歳のウィリアム・ミラーはサンディエゴで大学教授の母親と暮らしている。弁護士を目指す学業優秀な少年だったウィリアムだが、シスコでスチュワーデスになると言って家を出た姉が残していったロック・アルバムを聞くうちに、その世界にのめり込んでいく。ウィリアムは伝説的なロック・ライターでクリーム誌の編集長、レスター・バングスに自分が書いた学校新聞の記事を送ったところ気に入られ、会いに来たウィリアムに仕事をもらう。評論家で成功したけりゃ、正直に手厳しく書けというレスター。取材で楽屋を訪ねるウィリアムの目に入ったのは、入口にたむろするグルーピーの中に、圧倒的な存在感でひときわ目立つ少女ペニー・レインだった。彼女は、ロックスターと寝るだけのグルーピーではなく、音楽を愛してバンドを助けるバンドエイドだという。彼にとって彼女は愛らしくカッコいい存在だった。彼が目当てのバンドへの熱い思いを語ると、ギターのラッセルが楽屋に入れてくれた。まもなくラッセルとペニー・レインは付き合い始めるが、ウィリアムのペニー・レインへの淡い恋心は変らない。ある日、ローリングストーン誌の編集者が、サンディエゴの新聞記事を読んでウィリアムに原稿を依頼してきた。ウィリアムは年齢を偽り、ブレイクしそうなスティルウォーターのツアーに同行取材するという話をまとめ、怒涛の取材ツアーが始まった。張り切るウィリアムに、仲間として接してくれるラッセルは一緒に楽しむことしか考えず、裏話も書くなと言われてしまい、他のメンバーもジャーナリストは敵だという態度を崩さない。ウィリアムは独り焦っていた。刺激的な毎日を楽しむだけで、まともな取材は何ひとつできていなかった。心の支えは、ペニー・レインへの想いと、的確なアドバイスをくれるレスターの存在だった。ツアー先のNYにはラッセルの本命がおり、ペニー・レインは置いていかれてしまう。内幕暴露の刺激的な原稿になると聞いたベンはウィリアムに、スティルウォーターの表紙トップを約束する。ウィリアムは店でくつろぐメンバーにそれを発表し、誰もが有頂天になった。その時、突然ペニー・レインが現れ、追い払われてしまう。彼女のホテルに駆けつけと、足元はふらつき、部屋には蓋の開いた睡眠薬の瓶があった。
 1973年、たった15歳でローリングストーン誌のライターとしてデビューした少年、厳格な母、セックスもドラッグも知らない。ロック・ジャーナリズムになんのコネクションも持たない少年は、一体どうやって成功を収めたのか。彼の正直さに、周りの大人たちが魅了されていくのだ。常に正直であることの難しさをよくわかっているはずのフツーの歳の生活から、ロックの世界に没入していく日々の中、彼は新しい刺激をどんどん吸収していく。しかし、その澄んだ眼差しは変らない。
 製作・監督・脚本は『ザ・エージェント』の大ヒットで知られるキャメロン・クロウ。主役のウィリアムは、自分自身がモデル。何だかふんわりとシアワセな気持ち、その原点が既に15歳の彼にあった。
 ウイリアムを演じるのは、映画初出演のパトリック・フュジット。全米各地から応募してきた何百本というテープの中の1本で彼を見たクロウのイメージにぴったりだった。また、エキセントリックなまでに口うるさい母親は『ファーゴ』でアカデミー主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンド。ウィリアムに適切なアドバイスを続けるレスター・バンクスをいまや売れっ子となったフィリップ・シーモア・ホフマンが強い印象を残している。そして何といっても圧倒的な存在感、純粋さと妖艶さを併せ持つペニー・レインになりきったのは、ゴールディ・ホーンを母に持つケイト・ハドソン。2人の恋の行方を追ううちに、大切な初恋ををもう一度体験できる。
 そしてもうひとつ注目しておかなければいけないのがサイモン&ガーファンクル、ザ・フー、イエス、ロッド・スチュアート、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、トッド・ラングレン、オールマン・ブラザーズ・・・・・あの時代のロックだ。キャメロン・クロウの16歳の時からの友人であるピーター・フランプトンが、テクニカル・コンサルタントを担当、ミュージシャン役の俳優たちにテクニックとスピリッツを指導、その結果、ライブシーンでは実際に聴衆の前でエキサイティングな演奏を披露するまでになった。
 ゴールデングローブ賞でミュージカル・コメディ部門の作品賞と助演女優賞(ケイト・ハドソン)、ボストン映画批評家協会賞で作品賞・監督賞・脚本賞、全米批評家協会賞で助演女優賞(フランシス・マクドーマンド)・脚本賞、LA映画批評家協会賞で助演女優賞(フランシス・マクドーマンド)と賞を総なめにしたがアカデミー賞ではノミネートどまりだった。やはり小作品としての評価しかないか。
 青春、音楽、ライター…まさにボクのためにあるような映画。贔屓があるかな。

◎作品データ◎
『あの頃ペニー・レインと』
原題:Almost Famous
2000年アメリカ映画
上映時間:2時間3分/コロンビア映画配給
監督・脚本:キャメロン・クロウ/製作:キャメロン・クロウ, イアン・ブライス/音楽:ナンシー・ウィルソン/撮影:ジョーン・トール
出演:パトリック・フェッジット, ケイト・ハドソン, ビリー・クラダップ, フランシス・マクドーマンド, フィリップ・シーモア・ホフマン

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