the green mile 3 

 大恐慌下の1935年のアメリカ。ジョージア州コールド・マウンテン刑務所の看守主任ポールは、死刑囚舎房Eブロックの担当だった。そんな彼のもとにジョン・コーフィという大男の黒人が送られてきた。幼女姉妹を虐殺した罪で死刑を宣告された彼は、風貌や罪状に似合わないほど弱く、繊細で純粋な心を持っていた。コーフィは、ポールに触れただけで彼の重い慢性疾患を治してしまう。彼はその後もいくつかの命を救い、これを見た看守達は、彼はその不思議な力を神から授かった特別な存在なのではと考え始めた。頼れる部下たちの中でただ一人傍若無人に振る舞う新人のパーシーが踏みつぶしたコーフィーの同房のドラクロアが飼っていた鼠の命を救うコーフィ。ドラクロアはその翌日処刑されたが、パーシーは残酷にも細工をして彼を電気椅子で焼き殺した。ポールらはパーシーを拘禁室に閉じ込めてコーフィをひそかに外へ連れ出した。刑務所長の妻で脳腫瘍で死の床にあったメリンダの命を救わせるためだった。コーフィは、拘禁室から解放されたパーシーをいきなりつかまえるや、メリンダから吸い取った病毒を吹き込んだ。するとパーシーは厄介者の凶悪犯ウォートンを射殺し、そのまま廃人になった。ウォートンこそ幼女殺しの真犯人だったのだ。ポールはコーフィに手をつかまれ、彼の手を通じて脳裏に流れ込んで来た情報で真実を知る。ポールは無実のコーフィを処刑から救おうとした。コーフィが電気椅子に送られることを行う自分達は大きな過ちを犯しているのではないかと。だが、彼は全てを終わらせたいと自ら死刑を望み、最後の望みとして映画『トップ・ハット』を見てからグリーンマイルに赴いた。グリーンマイル・・・・死刑囚が電気椅子まで最後に歩む緑の廊下をグリーンマイルと呼んでいた。そして1995年。老人ホームの娯楽室で名作『トップ・ハット』を見たポールの脳裏に60年前の記憶が甦った。あれから60年。あのときコーフィが与えた奇跡の力はポールの中にいまだに宿るのだった。
 スティーヴン・キングの同名ベストセラー小説の映画化で、スティーブン・キングの小説『ショーシャンクの空に』に続いてフランク・ダラボン監督がメガホンを取った。主人公ポールを演じるのは『フィラデルフィア』『フォレスト・ガンプ/一期一会』で2度のアカデミー賞に輝いたトム・ハンクス。この作品ではノミネートすらされなかった。多分その理由は、出演者全員が個性的で魅力的な中、一際輝いていた大男を演じたマイケル・クラーク・ダンカンの存在感の大きさのせいだと思う。本作では外見のイメージとはまったく違う小心者で心やさしい聖人として涙を誘う演技を見せている。
 さすがは元々ホラー系のコンビ。それが非ホラー作品で映画に再び取り組んだわけである。つまり、『ショーシャンクの空に』を連想してしまうのだ。比較してしまう。泣かせる感動作と思って観ると、エグい描写に目を覆ってしまう。奇跡の力という現実離れした題材に頼った分だけ『ショーシャンクの空に』よりドラマ性が弱い感じがする。しかし、そういう先入観を除いて観れば3時間を越える長丁場を一気に魅せる力のある作品だ。比較はナンセンスかもしれない。わずか30数作品の中でスティーブン・キングを取り上げるのは4回目。うち3作が非ホラー作品。ここでは言っていることが実に深い。死というものと愛というものを饒舌に表現しているのだ。電気椅子に向かう受刑者たちをグリーンマイルへと導く看守達。それぞれの最期の日を迎えるシーンは、目頭が熱くなる。人の死を人が行う。彼らの中には「殺人」という文字が消えない。たとえ正当で職務であったとしても、だ。死刑とはそういうものだ。死刑の是非が頻繁に問われる世の中で、人ひとりの命を考える機会を与える映画だ。そしてもうひとつ、愛。コーフィがポールに向かってこう言うシーンがある。「愛を利用した犯罪が多い」・・・夫婦愛、家族愛、許すことのできる愛、幸せを生む愛、そして不幸も生む愛。観客はこの映画を見ることできっと何かを感じるだろう。
 コーフィを助けられなかったということ、これは是か非か。心がやさしい看守たちだからびどすぎるって、感じますか。冤罪じゃないのかって問いたくなりますか。その日を前に、ポールがコーフィに望みはないかとたずねる。コーフィは答える。「すべてを終わらせることです」と。人々がお互いに傷つけあうのに疲れた彼には、あまりにも美しすぎる魂が宿っており、この世で生きることそのものが、苦しみだった。癒しつづける苦しみ、自分の持てる力と愛を施し続ける苦しみ。コーフィの願いのとおり、ポールたちに、天国に行く姿を見届けてもらえてよかったと感じてないだろうか。苦しみから解き放たれていないだろうか。
 間違えないでください。ボクは死刑を肯定も否定もしないし、死ぬことをもって苦しみから逃れることを肯定も否定もしません。ボクの思想や哲学は別のところにあります。ただ、コーフィが救われたことに感動してほしいともってこの映画をレビューする次第です。

◎作品データ◎
『グリーンマイル』
原題:The Green Mile
1999年アメリカ映画/上映時間:3時間3分/ギャガ・ヒューマックス配給
監督・脚本:フランク・ダラボン/原作:スティーブン・キング/製作:デイヴィッド・ヴァルデス, フランク・ダラボン/音楽:トーマス・ニューマン/撮影:デイヴィッド・タッターサル
出演:トム・ハンクス, デイヴィッド・モース, ボニー・ハント, マイケル・クラーク・ダンカン, ジェームス・クロムウェル

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