being john malkovich

 クレイグ・シュワルツは路上などで人形使いをしている、妻ロッテもペットショップに勤めているが、生活できるほどの収入がない。ある日、クレイグはこれでは生活できないと、定職に就くべく新聞の求人欄を広げ、マンハッタンのビルの7階と1/2にある会社、レスター社に就職する。同僚の美人OLのマキシンに一目惚れした彼は、彼女をくどくが相手にしてもらえない。そんな時、会社でファイリングをしていたクレイグは落とした書類を拾うときに意味ありげなドアをキャビネットの裏に発見する。恐る恐る入っていくと、そこは有名俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中につながっていた。15分間だけ入れてそのあと高速道路の側道に落ちるという妙な体験だった。クレイグはそれを使ってマキシンと商売を始め、次々と客をマルコヴィッチの穴に入れていく。が、それに気付いたマルコヴィッチ本人がそれを知ってしまうのだ。ジョン・マルコヴィッチは会社に押し掛け自分で自分の脳に入って行った。そこから事態はややこしくなっていった。ロッテがその穴に入り、男としてマキシンと性体験して子供まで作ってしまったりと、15分以上とどまれる術を見つけたクレイグも、マキシンとセックスをする。どんどんエスカレートしていく3人。結果、どうにもならなくなったクレイグは元の人形使いに戻り、マルコヴィッチはねじれた世界へ突入していくのであった。
 俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に入るという、奇想天外なコメディー。監督はこれがデビューのスパイク・ジョーンズ。脚本・総指揮もこれがデビューのチャーリー・カウフマン。出演は自分を演じるジョン・マルコヴィッチ、クレイグをジョン・キューザック、ロッテをのキャメロン・ディアス、マキシンをキャスリーン・キーナーが演じる。2000年ゴールデン・サテライト賞作品賞とキャスリン・キーナーが最優秀助演女優賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた。
 どこからこんな発想が出てくるのだろうというくらい度肝を抜かれた。ジョン・マルコヴィッチが自分を演じ、破滅していくという展開もとても意外だ。もう、とにかくジョン・マルコヴィッチが自分の脳に入って行った時のおかしいことおかしいこと、声をあげて大笑いした。
 ただ、話自体は支離滅裂だし、本人が自分の脳に入ることがどういうことかを考えだしたら、変になってくる。そんなことを考えずに笑えばいいのだ。ただ、そこから生まれた結果には少々考えさせられた。そういう世界を体験した3人が普通に戻ることにしたこと、自分の脳に入ってしまったジョン・マルコヴィッチは違う人生を送ることになってしまったこと。この話はあり得ないが、考えられないシチュエーションに置かれると、人生が狂ってしまうことがあることを言っているような気がする。設定があり得ないだけだ。そして15分だけなら超有名人になってみたいという人間の欲望を如実に表している点も興味深い。主人公3人はこれを別の道具に使ったがお金を払って入りに来た客は単なる興味本位だ。自分だったらマルコヴィッチになったら何をしただろうか、とか考えると面白い。できればボクはスティーブン・ドーフの方がありがたい。いや、スティーブン・ドーフの恋人がいいかも。
 人形の中に魂を込めていた主人公が、別の容れ物を見つけた。そして、最終的にはもともとの人形に魂を吹き込むことに戻っていくのである。人を操る、これは難しい。結局は容れものが違っただけで人形であろうがマルコヴィッチであろうが、クレイグはクレイグでしかありえなかったのだ。奥が深いと言えば深い。監督はこの映画にどんなテーマを込めたのだろう。話が奇抜なだけに、ただの狂った映画になってしまいがちな設定なのに、ここからヒューマンさを引き出したのには恐れ入る。人形使いの主人公でなければ意味がなった作品だと思った。のちに『アダプテーション』という秀作も撮る。まだまだ40歳前、これからが楽しみだ。

◎作品データ◎
『マルコヴィッチの穴』
原題:Being John Malkovich
1999年アメリカ映画/上映時間:1時間52分/アスミック・エース配給
監督:スパイク・ジョーンズ/脚本・製作総指揮:チャーリー・カウフマン/製作:マイケル・スタイプ, サンディ・スターン, スティーブ・コリン, ヴィンセント・ランディ/音楽:カーター・パーウェル/撮影:ランス・アコード
出演:ジョン・キューザック, キャメロン・ディアス, キャスリン・キーナー, ジョン・マルコヴィッチ, チャーリー・シーン

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