boogie nights

 1977年ロサンゼルス郊外のサン・フェルナンド・ヴァレーという街。エディ・アダムスは、ファラ・フォーセットとブルース・リーに憧れる普通の17歳の高校生。ただひとつ普通と違っていたのは35cmはあろうかという巨大なペニス。ディスコで皿洗いのバイトをしている彼をポルノ映画監督ジャック・ホーナーが、ポルノ男優にならないかとスカウトにきた。家族から愛情を与えら得れていなかった彼は初めて他人から認められ、オーディションで実力を発揮した。実家を飛び出し、ポルノ業界に飛び込んだエディ。ジャックばかりでなくポルノ界スーパーヒロインや、プロダクション・マネージャー、他の男優たちに導かれ、またたく間にスーパーヒーローに登り詰めていった。名前もダーク・ディグラーと改め、次々と主演作をヒットさせ、ついにはポルノ界の各賞を総てかっさらっていった。しかし、頂点を極めた彼は次第にドラッグの快楽に溺れていった。依存し副作用から頼みのイチモツもだんだん使い物にならなり、若手の新人ポルノ男優の台頭に焦りを感じた。エディは皆に八つ当たりするようになり、勢いからジャックの元を飛び出してしまう。スポンサーを失ったエディは堕落の一途をたどり、80年代に入るとビデオの時代へ、レーガン時代の到来もあって、エディの堕落ばかりでなくポルノ映画産業自体が急速に冷え込んでいった。ポルノ俳優達は社会の偏見を受け就職難に苦しみ、華やかだったジャック邸も誰もいなくなってしまった。どん底から這い上がろうとするエディは、ジャックの元へ帰ってくる。やはり自分にはポルノ業界しかないと鏡を見つめて決意を固めるのだった。
 1970年代後半から80年代にかけてのポルノ産業に精通する人々の心の葛藤とポルノ業界の裏側を描く人間ドラマ。監督・脚本は『ハード・エイト』で監督デビューしたばかりのポール・トーマス・アンダーソン。彼の2作目である。1998年キネマ旬報ベスト・テン第10位に選出されている。こんな社会派な映画を撮影当時26歳の監督が脚本も書き作り上げているなんて驚きである。
 俳優陣も豪華で当時まだ映画俳優としては未熟だったマーク・ウォールバーグを主演で堂々たる演技にのし上げた。ニューキッズ・オン・ザ・ブロックや独立後のマーキー・マークとしての白人ラッパーの肩書から、カルバンクラインの下着モデルへと転身、身の振り方を迷っていた直後の俳優転身の端役からの抜擢だ。ジャックを演じたバート・レイノルズもこの映画で各映画賞の助演男優賞を総なめにした。ジュリアン・ムーアも熱演している。弱気な主婦の役もいいが、『美しすぎる母』といい、セックスシーンを大胆に演じさせると人が変わる。しゃれたシーンも多くマーク・ウォールバーグを中心としたダンスシーンなどは無意味なようでいて、映画のカラーを決定づけているように思う。音楽もグッド。
 ポルノ業界は絶頂期を迎えていた。まだエイズの心配もなかったころだ。そのころ業界の人間はポルノが芸術として認められると信じていた。それがアメリカの当時のポップ・カルチャー・シーンだ。あたかもマフィアのファミリーのように、ファミリーが結束される。独特の世界、成功の極み、ドラッグ、そして、転落。彼らの人生は一変する。そこでの葛藤が緻密に描かれている。ボクはこの作品でポール・トーマス・アンダーソン監督の将来性を確信した。業界を知らないから興味をそそられる一種のぞき見趣味的な悪趣味な見方だったが、この作品は社会の背景を痛烈に戦慄に描いている。そしてその中でも業界全体を象徴するような主人公エディの生きざま。はじめは家庭からはみ出し、同情をそそるが、スターになってからの彼の増長ぶりとドラッグに染まってゆく弱さの露呈、これはまさしくポルノ業界の脆弱な部分を代弁していた。ポルノ男優としての盛衰というものがこんな社会的な悲劇になってゆく。何はともあれ話の発端であるダーク・ディグラーの13cmのイチモツにぼかしを入れてしまってはげんなりだ。レプリカなのに。ことこの映画においてはぼかしが映画の良さを壊してしまっているといっても過言ではない。見たくていってるわけではない。この映画が今公開されれば、ぼかしはなくなっているだろうか。日本の映倫に喝だ。

◎作品データ◎
『ブギーナイツ』
原題:Boogie Nghts
1997年アメリカ映画/上映時間:2時間35分/ギャガ・コミュニカーションズ配給
監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン/製作総指揮:ローレンス・ゴードン/音楽:カリン・ラットマン/撮影:ロバート・エルスウィット
出演:マーク・ウォールバーグ, バート・レイノルズ, ジュリアン・ムーア, ヘザー・グラハム, ウィリアム・H・メイシー

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