boys on the side

 夜、勤めていたクラブで選曲が時代に合わないとクビになった歌手、ジェーンは組んでいたパートナーと離れロスアンゼルスに新たな生活を求めて旅に出ようとする。一方、ニューヨークで不動産の仲買人をしていたロビンも生活に嫌気が差し、同乗者を募ってサンディエゴに旅立とうとしていた。応募したもののジェーンはカーペンターをこよなく愛するロビンが自分と合わないと辞退するがロビンは一方的にジェーンを誘ってサンディエゴに向かった。途中、ジェーンは友人のホリーを訪ねるが、同棲中の恋人ニックと県下の真っ最中で、彼から離れたほうがいいと察したふたりはホリーも連れて旅に出ることに決めた。3人は旅を続けて行くうちにお互いの秘密を知るようになる。ジェーンはレズビアンで、恋人に振られたばかりであり、ロビンはHIVの感染者だった。ホリーは妊娠2カ月の身だった。そんな中、ホリーの恋人が死んだという事実を新聞の見出しで知り、自分たちが殺したのだと誤解してしまう。またロビンもエイズの感染症による肺炎で倒れてしまう。ホリーは殺人の容疑で、警察から手配される。いったん退院したロビンを連れて、3人でホリーとジェーンの知り合いのいるバーに行くと、そこへ警官がやって来くる。慌てふためくロビンとジェーンだったが、彼はホリーの別の恋人だった。ジェーンはロビンを慰めるため、ロビンに恋している男に働きかけるが、エイズを劣等感に感じているロビンは憐れみをかけられたと思いジェーンと決別してしまう。ホリーも恋人の警官に連れられる。ホリーは半年後に仮釈放程度の刑を受けるにとどまった。裁判の途中、証言台に立ったロビンは、その緊張感から容体が悪化し再び入院することに。ロビンは病床でジェーンに、10歳のころ、自分もある女性を愛していた事を告白する。やがてホリーの子供も生まれ、パーティが開かれる。ジェーンたちはロビンの好きなカーペンターズの歌を歌い、車椅子でロビンがそれを聞いていた。やがてロビンは病魔に勝てず、ジェーンはホリーとそこを出発する日、車椅子を見つめながら感傷に浸っていた。
 もう80歳を超える監督のハーバート・ロスは『チップス先生さようなら』『グッバイガール』『愛と喝采の日々』『カリフォルニア・スィート』『フットルース』など数々の名作を撮り続けてきた名監督。まだアカデミー賞の監督賞は獲得していない『愛と喝采の日々』でノミネートされたが、作品賞は獲得するものの監督賞は獲れなかった。もう高齢で、この1995年の『ボーイス・オン・ザ・サイド』以来新作の声を聞いていない。以前の強く作品にひきこむパワーは失い、数作前の『マグノリアの花たち』あたりから、非常に細やかな心の機微を描くようになってきたように思う。この作品でも大作の感じはないが、素晴らしい人間ドラマになっていると思う。新作を撮れるパワーは年齢的にないのかもしれない。3人の女優はあえて評する必要もないゴージャスなキャスト、レズビアンのシンガーのジェーンにウーピー・ゴールドバーグ、HIV患者のロビンにメアリー・ルイーズ・パーカー、破天荒なセックス依存者ホリーにドリュイ・バリモアが扮している。3人のバランスが非常によく、誰かが突出して映画を纏めている感じはない。アンサンブルがよい。
 人生に失速した3人の女性を旅を通して友情を育んで行く姿を描いたロードムービーだ。友情を描いた映画は数多くある。しかし、この特殊なシチュエーションで接するはずのないような性格三人三様の3人が一旦はバラバラになるが、最終的に共通点を見出し永遠の友情に包まれていく過程は実に見事だ、美しい。
 冒頭からしばらく、これは劣等感を面白おかしく挙げ連ねた不愉快なコメディかと思った。ところが、ロビンが倒れるあたりからぐっと辛辣なドラマにグラデーションしていく。例えば、車の中でジェーンのヘッドフォンをロビンが借りていいかどうか尋ねるシーンで断りもなくヘッドフォンをウェットティッシュで拭き始める。ブラックでドレッドヘアのジェーンを毛嫌いしているかのような潔癖症のロビンを演出するようなシーン、それを怪訝な顔で見つめるジェーン、しかし、後になって考えるとエイズである自分を移さないように他人に気配りしているエピソードだと気づく。ジェーンのロビンを思ってしたことがロビンの自尊心を気づつけるようなことになる直接的なシーンと対照的な演出だ。3人ともはまり役、ここでウーピー・ゴールドバーグが名演ぶりを披露しすぎるとこの作品は壊れてしまう。抑えた演技が好感がもてた。車椅子のロビンと囁くようにカーペンターズを口ずさむシーン、ここで『天使にラブ・ソングを』のように熱唱されちゃまずいもの。このささやくようなトーンがラストにロビンを回想するシーンに繋がると涙がとめどなくあふれてくる。ただ、ロビンにも愛した女性がいたという告白は蛇足だったかな。
 これはもっと評価されてしかるべき映画だと思う。

◎作品データ◎
『ボーイズ・オン・ザ・サイド』
原題:Boys on the Side 1995年アメリカ映画/上映時間:1時間57分/ワーナーブラザーズ映画配給
監督:ハーバート・ロス/脚本:ドン・ルース/製作総指揮:ドン・ルース, パトリシア・カーラン/製作:ハーバート・ロス,アーノン・ミルチャン, スティーブンルーサー/音楽:デイビッド・ニューマン/撮影:ドナルド・ソーリン
出演:ウーピー・ゴールドバーグ, メアリー・ルイーズ・パーカー, ドリュー・バリモア, マシュー・マコノヒー, アニタ・ジレット

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