edward scissorhands  2 

 丘の上の城の様な屋敷に年老いた発明家が住んでいた。彼はたったひとりで人造人間のエドワードを作ってたが完成間近に急死してしまう。エドワードはハサミの手のまま取り残されてしまった。化粧品のセールスで訪れていたペグによって発見された彼は町に連れてこられる。初めのうちは器用にハサミの手で植え木を切ったり、髪型を変えたりして物珍しがられるが、ハサミの手で次々と人の体や心を傷つけてゆくエドワードは町にいられなくなってしまう。ペグの娘キムに恋をするが、キムの恋人を不意に殺してしまう。彼は二度と町の人々の前に姿を現すことはなかった。
 監督は『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』のティム・バートン。この『シザーハンズ』は『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』と並んで最高傑作として賞賛されている。撮影も優れている。町を遠景で見せたり、厳かな城の全貌、雪を降らせるシーンは美しさの極みだ。そして何といってもこの映画にコミカルでハートウォーミングな印象を添えているのは俳優陣の演技。感情のなさそうで切なそうなエドワードを演じるジョニー・デップはセリフ少ない中で表情で名演をする。ずっとティム・バートンと組んで作品を作っているジョニー・デップだが、彼の代表的な作品になっていると思う。少なくともボクはいちばん好きだ。彼を町に連れてきたペグを演じるダイアン・ウィーストもやさしいおばさんぽい少し間の抜けた感じを醸し出していて優しさ溢れる作品の印象に一役買っている。あと、このことはまだ薬物中毒も高飛車な印象もかけらもないウィノナ・ライダーが可愛らしくていい。『ビートル・ジュース』でおかしな少女を演じて印象を残した彼女はずいぶんきれいなアイドルっぽい外見になり、ピュアな恋愛を誇張させている。この映画で実際にも恋に落ちたふたりはジョニー・デップが腕に「ウィノナ命」とタトゥーを入れるなどしたうえ、綴りを間違えて彫ってしまうなどおばかな話題には事欠かなかった。しかし、この映画は小作品として軽視されメイクアップや視覚効果も含め賞ものには一切無視されてしまった。残念だ。
 冒頭の20世紀フォックスの画像に雪が降っていて、最初からピュアな印象を想像させる。実際、この雪は、この物語に大事な伏線となっている。ラスト、年老いたキムが子供を寝かせつけるために語る物語の中で、子供から「エドワードは生きているの?」と訊かれ、「きっとね。なぜならエドワードがはじめてここに来るまで雪の降らない町だったの。でもそれ以来毎年雪が降るわ。それはきっとエドワードが降らせていると思うの」と答えるシーンがある。とてもきれいな言い回し、そしてきれいなエンディングだ。
 小さな作品とはいえ、興味惹かれる部分は多分にある。キムが「抱きしめて」と言ったときハサミの手では「出来ない…」としか言えない彼の虚しさ、抱きしめたいのにできない切なさは痛いほど伝わる。ハサミの手では触れるだけで傷つけてしまう。キムの弟を助けるシーンでも傷つけてしまう。キムの恋人をちょっと振り払っただけでも傷つけてしまう。自分は愛を表現したくても傷つけることしかできない辛さがとても痛い。人を傷つけるたびに彼の心も傷ついているのに。人造人間にこんなピュアな心を持たせ、しかも完成前に死んでしまった博士は罪深い人だ。彼が生きていれば、実に幸せなエドワードの人生なった気がするし、けれど、町に降りて初めて人間的な自分を発見したともいえる。そして人というものは珍しいうちは興味を持ってもたはやすが、ひとたび面倒が起きるとフリークスとして突き放してしまうエゴイストな動物であることも語っている。
 下手をすれば、カルトムービーになってしまうところだが、エドワードの孤独な魂に終始徹底し拘ったせいで美しいメルヘンに昇華させてある。あり得ない設定、奇想天外な発想はコメディであり、ラブストーリーであり、人間ドラマであり、ファンタジーである。どのジャンルに入れるか迷った。奥深さはないが実に心温まる優しい、個人的に大好きな作品になった。何度観ても、ハートウォームな心地よさがある。

 
 ◎作品データ◎
『シザーハンズ』
原題:Edward Scissorhands
1990年アメリカ映画/上映時間:1時間38分/20世紀フォックス配給
監督:ティム・バートン/原案:ティム・バートン, キャロライン・トンプソン/脚本:キャロライン・トンプソン/製作総指揮:リチャード・ハシモト/製作:デニーズ・ディ・ノービ, ティム・バートン/音楽:ダニー・エルフマン/撮影:ステファン・チャプスキー/特殊メイク:スタン・ウィンストン
出演:ジョニー・デップ, ウィノナ・ライダー, ダイアン・ウィースト, アンソニー・マイケル・ホール, アラン・アーキン
 
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