the fisher king

 過激なトークが売りもののニューヨークの人気DJジャック・ルーカスは、皮肉と毒舌、過激なテンポの速いトークが売りの男。それが番組で恋の悩み相談を持ちかけたリスナーによって失意のどん底に突き落とされた。「ヤッピーたちを殺せ!」というジャックの言葉を真に受けて、レストランで銃を乱射、7人の犠牲者を出して自らも死に、一躍ジャックの悪影響が報道されたからだ。3年後、落ちぶれたジャックは恋人アンの経営する下町のビデオショップで、居候生活を送っていた。ある日、泥酔したジャックは暴漢たちに襲われ、危うい所をホームレスのバリーという奇妙な男に救われた。バリーの寝ぐらになっているボイラー室にかくまい、壁に描かれたは中世の城と騎士、馬に乗る悪魔の赤い騎士を目にした。バリーは聖杯を探しており、それはニューヨークの大富豪の邸宅にあると言う。そして赤い騎士の妨害を振り切り、ジャックがその聖杯探しの力になる希望の騎士なのだと興奮して言うのだ。バリーは頭のいかれた男だとその場を逃げ去ったジャックは、ある日ビルの管理人から、バリーが昔、大学教授であり、レストランで食事中に銃の乱射により愛妻を殺された過去があることを知る。バリーもまたジャックを失脚させたあの事件の犠牲者だったのだ。忌わしい罪の意識を思い起こしたジャックは、事件以来すっかり人が変わってしまったというバリーに罪の意識を感じ、憧れの女性、リディアとの仲をとりもつことにする。何とか2人を引き会わせ、アンと4人で食事をするまでにこぎつけたジャック。バリーの一途な気持ちに孤独なリディアも心を動かされた。だがその夜、バリーの目の前に赤い騎士の悪夢が現れ、逃げるバリーをいつかの暴漢が再び襲う。そうとは知らないジャックは爽快感で一杯、仕事を再開することに。だが、バリーの事故の知らせを受けて病院に向かうと、そこには包帯でぐるぐる巻きにされ、精神症が再発して空を見つめるだけのバリーの姿が。バリーの回復のためには、あの聖杯を手に入れるしかないと、ジャックは富豪の屋敷に忍び込む。命からがら、聖杯を手に入れたジャックはバリーのもとへ。聖杯を手にした喜びにバリーは一気に回復、病中も看護を続けたリディアとの愛も叶えられる。やっと人間らしい心を取り戻したジャックは、バリーとニョーヨークの夜空を見上げた。
 タイトルの「フィッシャー・キング」は聖杯伝説の「漁夫王」から来ている。中に登場する聖杯のエピソードをうまくタイトルと絡み合わせている。監督は独特のユーモアを持った映像表現豊かなテリー・ギリアム。彼がラブロマンスを描くことは珍しく、奇想天外なアイディアや視覚効果の優れたファンタジーが魅力と言える。だが、彼が恋愛を語ってもシニカルでユーモアが溢れている点は変わらない。彼らしい映画だと思う。バリーの恐怖の象徴として現れる甲冑に身をまとった巨大な赤い騎士の登場するシーンや、バリーの心象風景として表現される群衆がワルツを踊るシーンは監督の真骨頂とも言える。ダンスのシーンでは1000人のエキストラを使っていて壮観だ。彼の秀作『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』に負けない出来だと思う。むしろボクはこの映画の方が好きだ。
 俳優陣も素晴らしく、この個性豊かなジャック、アン、バリー、リディアがそれぞれ食われ合うことなく独特のバランスでストーリーを盛り上げる。いちばん地味な印象を受けるアンを演じたマーセデス・ルールが他3人に較べ奥の深い豊かな表現力でアカデミー賞の助演女優賞を受賞している。でも、ボクはやはりバリーを演じるロビン・ウィリアムズとリディアを演じるアマンダ・プラマーの怪演に拍手を送りたい。このふたりのハイテンションぶりは並ではない。ロビン・ウィリアムズの全裸で踊るシーンはハイテンションの極みである。でもそれに負けてないアマンダ・プラマーの破天荒ぶりも見ものである。この映画では、4人の喜び、悲しみ、さまざまな喜怒哀楽の交錯の中で、最後は登場人物の誰もが幸せになる、ハッピーなおとぎ話だ。この映画ほどピュアでハッピーで奇を衒ったおとぎ話は皆無であると言いたい。元来、ただドタバタするコメディは苦手なボクだが、こんなハートウォームなコメディならいくらでも観ていたい

 
 ◎作品データ◎
『フィッシャー・キング』
原題:The Fisher King
1991年アメリカ映画/上映時間:2時間17分/コロンビア映画・トライスター映画配給
監督:テリー・ギリアム/製作:デブラ・ヒル, リンダ・オブスト/脚本:リチャード・ラグラヴェネーズ/音楽:ジョージ・フェントン/撮影:ロジャー・プラット
出演:ジェフ・ブリッジス, ロビン・ウィリアムズ, アマンダ・プラマー, マーセデス・ルール, マイケル・ジェッター
 
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