running on empty
 アメリカのニュージャージー州の小さな町、17歳の少年ダニーは1960年代に反戦運動家として指名手配され、今現在もFBに追われている両親とともに家族の団結をモットーに逃亡生活を続けていた。町を移動するたびに髪の色を変え、名前を変え、ここではマイケルと名乗って暮らしていた。母からもらった髪のキーボードが彼の生きがいだった。高校で音楽教師フィリップスにその才能を認められた彼はジュリアード音楽学院へ推薦入学の私見を受けるように薦められる。しかし家族の団結を重んじるダニーは自分の夢を貫くべきか迷っていた。高校ではフィリップの娘ローナがクラスメイトにいて、やがてふたりはお互いに惹かれあうようになる。音楽への夢とローナへの想いそして家族の団結の中で決心をできずにいるとき、両親のかつての仲間が銀行強盗を未遂し警察に逮捕される。一家は窮地に追い込まれた。ここから立ち去らねばならない。ダニーはローナに自分の秘密を打ち明け、家族との団結をいちばんに選ぶ決心をした。しかし、ダニーの母アニーは息子に才能と夢があることを知り、ダニーを置いて町を出ようと家族に持ち掛ける。反対する父親との意見の食い違いで崩壊しそうになる家族。しかし、親のエゴイズムで息子の将来を潰してはいけないと、ダニーと別れる道を選ぶ。ダニーの旅立ちの時が訪れた。
 家族への絆と彼女への想いを残し、音楽の夢に向かって自立してゆく少年の姿を描いた青春映画。社会はドラマを撮り続けていたシドニー・ルメットが少年の心の機微を繊細に描いた秀作である。この映画で少年を演じたリバー・フェニックスはオスカーにノミネートされる。他の映画祭では母アニーを演じたクリスティン・ラーティも評価されてたようだし、ナオミ・フォーナーの脚本も評判が良かった。しかし、ファンでなくてもこの映画はリバー・フェニックスの映画と言えてしまうだろう。彼の細やかで丁寧な演技は揺れる少年の心を単なる人気スターとしてでなく、演技派として存在感を見せつけた。
 当時、この映画は『タッカー』と2本立てで『タッカー』の方がメイン作品になっていた。驚きだ。こんなアイドルスターの秀作を裏に持ってくるとは。別の言い方をすれば非常に豪華でお得な2本立てということになる。これを当時1000円くらいで観られたのだからゴージャスな気分だった。この頃の名古屋は2本立てが普通で、単独上映の方が少なかった。もしお得な2本立てベストテンというのがあったらこの2本立てをボクは選ぶだろう。
 家族との確執と音楽への夢と言えば、ボクが感情移入し過ぎるのは当前のことだった。この映画ではダニーは夢を見させてもいらえることとなった。ボクと違う点は、ダニーの音楽はクラシックであることと、ダニーは家族をとても愛していて団結を重んじたことだ。ボクが家族を憎んでいるわけではないが、ダニーほど愛情を持ち合わせていない。できれば自分の夢を優先させたい方だ。しかし、ボクは家族に翻弄され欝病になり、音楽への夢は棄てることとなった。いや、まだ少しだけ諦めていないけれど。
 ファンでないともしかしてだらだらと冗長な感じがするかも知れない。しかし、感情移入ができればこの映画はとても素敵な映画になると思う。両親の罪を何も背負う必要なはないのにどうしてダニーはあれほど絆を大事にできただろう。父親が厳格過ぎただろうか。うん、それも否めないけど。ただ、ボクは母と学校の教室で連弾するシーン、これが家族への愛すべてを物語っていたように思う。
 当時実際に付き合っていたマーサ・プリンプトンとの鼻をこすり合わせる妙な愛情表現にも切なさを感じた。まだ愛をはぐくむには幼すぎるし、重いものを背負いすぎていると感じた。
 ラスト、家族に「行くぞ」と号令をし、ダニーには「荷物を(車から)降ろせ」と告げた父。不器用な愛情表現だが、泣けた。そして取り残されてしまうダニーから淋しさや哀しみのオーラは感じない。この映画は、背景の悲惨さに較べ愛にあふれたピュアな映画だ。
 
 ◎作品データ◎
『旅立ちの時』
原題:Running on Empty
1988年アメリカ映画/上映時間1時間55分/東宝東和配給
監督:シドニー・ルメット/製作総指揮:ナオミ・フォーナー, バート・ハリス/脚本:ナオミ・フォーナー/製作:エイミー・ロビンソン, グリフィン・ダン/音楽:トニー・モットーラ/撮影:ゲリー・フィッシャー
出演:リバー・フェニックス, クリスティン・ラーティ, マーサ・プリンプトン, ジャド・ハーシュ, アリス・ドラモンド
 
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