pelle erobreren 2
 1900年頃のデンマーク、スウェーデンから移民を乗せた船が、ボーンホルム島に到着した。ラッセとペレのカールソン父子は、「夢の楽園」を想像し、仕事を捜しに方々を訪れたが、老人と子供という理由でなかなか職に就けなかった。最後にやって来た石の農園の管理人にようやく拾われ、牛小屋で暮らすことになった。移民の子のペレにはつらい日々だったが、ラッセは怒りに駆られるだけで何もする術がなかった。ペレをかばうのは、いつかアメリカに行くことを夢みている同じ使用人のエリックだった。新学期が始まりペレは学校に入学するが、農園では主で女たらしのコングストルップ氏の夫人に可愛がられ、農婦たちの人気者でもあった。コングストルップの私生児のルズも友達になった。しかしルズは期末試験の日に島を去り、その船主の息子ニルスとの間の嬰児を殺したアンナが警察に逮捕され、絶望したニルスも、難破船を救いに嵐の海に出て死んだ。そして管理人からできもしない無理難題を命じられたエリックは、怒りに任せ管理人に襲いかかり、その最中の事故で頭を強打し、廃人となってしまう。ある嵐の日、ペレがオルセン夫人の家に厄介になったことから、ラッセは夫人と親しくなり、彼女との結婚を決意する。夫人の夫は漁に出たきり帰って来なかったのだ。その頃農園ではコングストルップ夫人が、姪のシーネ嬢に夫が乱暴を働いたことを知り、ハサミで夫の性器を切り取ってしまうという事件が起きていた。新しい母ができることにペレは喜んでいたが、オルセン氏が島に戻ってきてしまい、父の結婚はお蔵入りになってしまった。ペレは学校でクラスメイトから“オルセン夫人のヒナドリ”とからかわれ、学校に行かなくなる。ペレは春が来たらここを出て世界を征服しよう、と廃人となったエリックに話を持ち掛ける。やがてペレは、コングストルップ夫人から新しい管理人助手を命じられるが、制服の仕立ての日エリックが農園から連れ去られる光景を目撃し、彼もこの農園を出ていこうと決意する。老いた父に旅の余力は残されておらず、父を牛小屋に残し、ペレはひとり雪原を歩き始めた。
 ラッセとペレ、老いた農夫と幼い息子のスウェーデン人父子の移住に絡む過酷な運命を描いた大作、石の農園での重労働、イジメに耐えて成長する少年ペレの姿を感動的に描く。映画の冒頭でのペレはラストシーンでは強く逞しくなった青年に見える。原作は、マーティン・アナセン・ネクセの大河小説「勝利者ペレ」。映画はその幼年時代を描いている。ペレの成長していく様子が、北欧の雄大な自然を描くことで困難に立ち向かっている様を背景にしているようで感動を誘う。
 この作品は1988年の第61回アカデミー賞外国語映画賞を始め数々の賞を受賞した。先んじてカンヌ映画祭でこの映画がグランプリを獲ったことで俄かに脚光を浴びた。その年の各国の外国語映画賞は総なめにしたと言ってよい。しかもビレ・アウグスト監督の次作『愛の風景』も再びカンヌでグランプリを獲ったから凄い。でも、残念ながらこの2作が監督のピークだったかもしれない。しかし、この映画は、本当に強く逞しくなってゆく少年の映画だから美しい。貧しさの中に見え隠れする希望があるわけでない、ただやみくもに悲惨で陰惨たる物語だ。映画が終わって、果たして少年は世界を制覇できるのかもまったくもって不安なほどで旅に出るというよりは逃げていくといった状況に近い。なのに、ペレを演じる少年の表情や姿勢には強い意思が感じられるのはなぜだろう。何度観ても、ボクは負けない、と思える映画だ。喜びと切なさを希望に変えて旅立つ大自然の映像の中に遠ざかったペレが、その後幸せでいたことを心から望んで止まない。

◎作品データ◎

『ペレ』
原題:Pelle Erobreren(英語タイトル:Pelle the Conqeror)
1987年デンマーク・スウェーデン合作映画/上映時間:2時間30分/フランス映画社配給
監督・脚本:ビレ・アウグスト/製作:ベア・ホルスト/原作:マーティン・アナセン・ネクセ/音楽:ステファン・ネルソン/撮影:イェリエン・ペルション
出演:マックス・フォン・シドー,ペレ・ベネゴー,エリック・ポスゲ,アストリズ・ヴェラウメ,アクセル・ストロビュー
 
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