my own private idaho

 ナルコレプシー―緊張すると睡眠発作を起こし意識がなくなる―この持病を持つマイクはポートランドの街角に立ち、体を売っては日々暮らしていたストリートキッズ。そんなマイクにはポートランド市長の父を持つ親友のスコットがいた。彼も男娼をしていた。ある日マイクは、スコットに愛を打ち明ける。それを受け入れきれないで理解しようとするスコットはマイクを捨てた母をマイクと一緒に捜す決心をする。兄リチャードが暮らす故郷アイダホ、その道路はマイクにとってとっておきの風景だった。会えば喧嘩をする兄から手掛かりを得、スネーク・リバー、イタリアへと旅をする2人。しかしマイクは、イタリアで、スコットとは進む道が違うことを思い知らされる。イタリアで恋に落ちたスコットは、父親が病魔に冒されていることを知り、21歳の誕生日を境に生まれかわることを秘かに自分自身に誓い彼女をフィアンセとする。一方、マイクは母がアメリカヘ帰るといったまま消息を断ったという知らせを聞き、悲しみにくれる。マイクは淋しく独りでポートランドに帰り着き、またホモの男たちに抱かれる毎日へと戻った。キッズたちを仕切っていたボブを、高級スーツに身を包んだスコットは、冷たくつきはなした。深い絶望の中、ボブは自らの命を絶つ。彼の葬儀の日、スコットの父の葬儀も行われ、立派な儀式の隣りで、ボブへのキッズたちの心からの弔いが行われる。スコットとマイクは目と目を合わせるが、2人はもはやお互いが遠く離れてしまったことを思い知るだけだった。1人きりになったマイクは、アイダホの長い1本道でナルコレプシーの発作によって眠り続ける。1台の車が通りかかり金と荷物を奪っていく。さらに、1台の車がやってきてまだ眠っているマイクを連れて通り過ぎていった。
 
 ホモセクシャル、近親相姦という要素をバックグラウンドにし、一風変わったロード・ムービーとも言える様相を呈したこの映画をボクはゲイのブログの最初の記事に選んだ。「家族」とアイデンティティを求めて旅する姿がテーマと言える。監督のガス・ヴァン・サントは、眠りに落ちたマイクの夢に常に母親のいる風景を描き、家への回帰をポエティックに描いている。
 ゲイの男娼のマイクを演じるリバー・フェニックスはその個性を見事に発揮している。彼にしか出せない雰囲気だと思う。バイセクシャルであり結婚して全うな道に戻ることを選んだスコットを演じるキアヌ・リーブスもその劇中の変貌ぶりを演じ切っているが、やはり、リバー・フェニックスの個性あふれる演技は難しい役どころをとても自然に見せている。ホモセクシャルとバイセクシャルの微妙なずれをうまく描いていると感じる。ボクは結局はゲイの道を選んだが、女性経験がないわけではなく、これでも3度ほど結婚に辿り着きそうになったことがある。でも、自分に忠実でいることにした。性生活とか無理ですから。かといって男性と結婚する気もないけど。同居も微妙、プライバシーが保たれればするかも、という程度。
 また、他方で、マイクは兄のリチャードに向って「あんたが父親だ」と責めるシーンがある。事実は映画の中で明らかにされていないが、もし本当だとすれば兄と母との間に生まれた近親相姦の子供ということになる。心境は複雑だ。ラスト、故意にだと思うが遠景でマイクを連れ去るシーンでは誰だかわかりにくいように撮られているが、おそらくあれは兄のリチャードなのだろう。ゲイというだけでも数奇な人生なのに、これは悲惨だ。体でも売ってないとやりきれないかも知れない。彼は、普通にはなり切れずに、それを拒絶するかのように、外れた道を選んだように思える。家族に理解されるというのは難しいし、赦されても本心までは解ってもらえないものだと思う。やはり、家族と離れて恋人と暮らすか、一生独りを決め込んだ方が自然だと思う。共同生活は相容れない、そう思う。さあ、ボクはもう、家族に諦めてもらえただろうか。この映画ほど背景は悲惨ではない。ただ、ボクには介護をしなければならない運命があった。そこに鬱が絡んだ。敷かれたレールから脱線するということは、それだけ道なき道を自分で模索しながら歩かなくてはいけない。その轍は後に続く人の道になりえるのだろうか。無理だろうな。
 マイクが射精する瞬間を、家が落ちて砕ける映像を挿入することで表現しいているのは実に斬新だった。その枠の中で面白い撮り方をしているとボクは思う。実にいやらしくない。盛り上がりに欠けるようにも思うし、ボクがリバー・フェニックスのファンということで偏見が入っているが、この映画、是非みなさんの賛否を仰ぎたいものだ。
 
 ◎作品データ◎
『マイ・プライベート・アイダホ』
原題:My Own Private Idaho
1991年アメリカ映画/上映時間:1時間44分/日本ヘラルド映画配給
監督・脚本・製作総指揮:ガス・ヴァン・サント/製作:ローリー・パーカーマーキー/音楽:ビル・スタッフォード/撮影:エリック・アラン・エドワーズ,ジョン・キャンベル
出演:リバー・フェニックス,キアヌ・リーブス,ジェイムズ・ルッソ,ウィリアム・リチャート,ロドニー・ハーヴェイ
 
recommend★★★★★★☆☆☆☆
favorite   ★★★★★★★★☆☆
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