a river runs through it
 1912年、アメリカ、モンタナ州ミズーラ。ノーマンとポールの兄弟は、父親のマクリーン牧師にフライフィッシングと勉強を教わっていた。ノーマンの夢は牧師かプロボクサーになること、ポールの夢はプロのフライフィッシャーである。19年、ノーマンは東部のダートマス大学に進学し、7年後、ノーマンがやっとミーズラに戻った時、父は歓迎の言葉のかわりに将来の進路を決めかねているノーマンを批判する。一方ポールは地元の大学を卒業し、地方新聞の記者をしている。ノーマンは、弟が酒と賭けポーカーにのめり込んでいるのを知る。兄弟は早速川に入り、釣りをする。ノーマンは、弟のほとんど芸術と化したフライフィッシングを見つめていた。ある日ノーマンは、警察に再び呼び出された。彼は家に戻ると、ポールが殺されたことを両親に報告するのだった。
  1920年代のモンタナを舞台に、フライフィッシングで結ばれた兄弟と父親の家族の絆を描く人間ドラマ。第65回アカデミー賞の撮影賞を受賞したこともあり、とても映像が綺麗だ。ブラット・ピットがフライ・フィッシングで釣り上げた「大物」を手に、父と兄を自慢げに振り返るシーンはなんとも美しい。破天荒な生き方をする弟と堅実で努力型の兄、そして父。時が流れ、それぞれの道を歩んでも、3人は常にフライフィッシングで結ばれている。いつもいちばん好きな映画はなにか訊かれるとひとつに選べないので、困るが、この映画を言うように決めている。
 ボクにはこれは釣りの映画ではなく、家族の物語だと思っている。もっと言うなら兄弟の映画だと思う。原作が実話なだけに、ボクも自分と家族の関係を重ね合わせてしまう。ポールがノーマンの彼女の兄のことを「たぶん彼は誰かに助けを求めている」という台詞が本当は自分のことを言っていると思えて胸にぐっときた。彼は危ない生き方をすることしかできないその道から救い出してほしいと本当は思っていた。釣りを通してのみ競い合いながらもすべてを曝け出し合える兄弟は、本当は愛し合っているのだ。そして、フライフィッシングではノーマンはポールに敵わないと思っている。彼が堅実でさえあれば、まっとうな生き方をしてくれさえしたら、そう思っているが、その真面目で真摯な生き方をすることで人生では勝とうとしている。いつも闘っている。でも、本当は尊敬し合い助け合いたいのである。ところが結末はポールの死により悲劇を迎えてしまい、ノーマンは終にどの場面においても勝てなかったと感じているのだと思う。でも、ポールは死に、ノーマンは生きている。家族を養っている。これでも、ポールには生涯勝てなかった。嫉妬と確執、これを超える兄弟愛を、しかしながらノーマンは感じたのだろう。ポールもきっと絆を確信しながら死んでいったと思う。本当は助けを求めていたポール、それを言えない意地っ張りなポール、死にさえしなかったら、無茶な生き方さえしなかったら...。ボクはポールであり、姉たちはノーマンかもしれない。それでもギャンブラーにはなりきれなかったボクはポールにもなれていない。ボクも何かこれといったものを掴まないうちに死んでいってしまうのだろうか。無茶な生き方だろうか。アブノーマルな感情の持ち主だろうか。わがままなやんちゃ坊主だろうか。うまくSOSさえ出せない不器用な人間だろうか。間違ったポリシーを頑固に貫き通す頭の固い人間だろうか。
 実は原作を読んでいない。読んでみたいと思う。ブラット・ピットについてはボクはこの映画での釣り上げたときの笑顔がいちばん美しく素晴らしいと思っている。役全体からいえば、『12モンキーズ』の精神に異常をきたしている役の方が名演かもしれない。でも、『テルマ&ルイーズ』でチョイ役を演ったのを見たときから、いつか出てくる役者だと思っていた。最近では製作にも手を出しているが、いずれオスカーを獲得するくらいの器は持っているだろう。もうアイドルでもないように思う。作品も選べる立場にあるから、もっとすごいはまり役をいつか掴まえてほしい。若き日のロバート・レッドフォードと言われ、だからこそ、監督が惚れた役に彼を配役したと言われている。
 淡々としすぎている映画だろうか。ボクはそうは感じない。表情や仕種のひとつひとつ、台詞の言い回しや間にとても深さを感じる。なにはともあれ、兄弟の愛、嫉妬、競争心、確執、絆、等々を深く掘り下げて観て欲しい。

◎作品データ◎

『リバー・ランズ・スルー・イット』
原題:A River Runs through It
1992年アメリカ映画/上映時間:2時間4分/東宝東和配給
監督・製作総指揮:ロバート・レッドフォード/製作総指揮:パトリック・マーキー/原作:ノーマン・マクリーン/脚本:リチャード・フリーデンバーグ/音楽:マーク・アイシャム/撮影:フィリップ・ルースロ
出演:ブラッド・ピット,クレイグ・シェーファー,トム・スケリット,ブレンダ・ブレッシン,エミリー・ロイド
 
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